先進国から後進国へのマネーの流れの構図

先進国から後進国へのマネーシフトは続くのか?

グローバルなマネーの流れに変化が生じてぃるご1111年1月最終週には、世界の新興国株式ファンドから70億ドル(約5800億円)もの資金が流出し、3年ぶりの減少幅を見せた。対して先進国株式ファンドには66億ドル(約5500億円)の資金が流人し、5週間連続の増加である。

 

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背景としては、エジプトのデモに象徴される新興国特有の地政学的リスクの高まりがある。さらに、こうしたデモのキッカケとなった食品価格急騰(アグフレーション)があることは言うまでもない。加えて、インフレ懸念が高まる中、中国、インド、ブラジルなどの主要新興国が相次いで金融引き締めに走っていることも嫌気された。

 

その結果、先進国へのマネーリターン現象が起き、日米の株式がその恩恵を受けている。こうした中、個人投資家の素朴な疑問は「この新興国から先進国へのマネーシフトがいつまで続くのか?」、そして「米国経済好転を信じてよいものか」といったことだ。

 

筆者の答えはこうである。現状を分かりやすく例えれば、米連邦準備制度理事会議長のバーナンキさん主催のQE2(量的金融緩和第二弾)で、ホストがシャンパンのマグナムボトルを開けてくれている。瓶の中からほとばしり出るのは大量のドル紙幣。せっかくの大盤振る舞いゆえ、そのおこぼれにあずかるのもよかろう。ただしバーナンキさんがいつ壇上に立って「宴たけなわではありますが……」と中締めを宣言するやもしれず。パーティーがお開きとなれば、会場に散乱するドル札は回収されることになる。だから会場の奥までは入らず、いつでも逃げ出せる会場の出口付近でチョビチョビ飲んでいるほうが安心でしょう。

 

米国経済を冷静に分析すれば、昨年末のブッシュ減税延長、そして追加的量的緩和が確かに効いて、経済指標も好転しつつある。しかし問題は、FRBによるマネーじゃぶじゃぶ作戦がいつ終了するのか。QE2に続いてQE3まであるかもしれないが、いずれにせよこれは有事対応の非伝統的金融政策。それがいつ平事対応の水準に戻されるのか。

 

米国が抱える住宅問題と雇用問題

米国経済の病巣は根深い。住宅問題にしても、たとえ前月比で住宅販売件数が増えたとしても、構造的問題は一向に手つかすのままだ。まずほとんどの米国住宅関連債権を連邦住宅金融公社ファニーメイとフレディーマックの2社が引き取り、米国政府がこの2社を

 

実質国有化していること。兆ドル単位で民のリスクを官に移転したのだが、これを再び民に戻す方策が見えない。オバマは8〜10年計画でこの2社に対する巨額の公的資金投人を減らす計画だが、具体的内容は依然不明である。

 

住宅といえば、住宅ローン差し押さえ問題の悪化がある。すでに560万戸が差し押さえ、あるいは3ヵ月以上の返済遅延状態にある。加えて今年の新たなローン債務不履行件数が150万戸に達するとの試算も出てきた。ここまで差し押さえが急増すると事務処理も追いつかず、一件あたりこれまでの倍以上、平均15ヵ月の期間がかかっている。

 

その間多くの物件は荒れ放題で、ますます資産価値は下がり、余波で近所の不動産価格まで下がってしまう。加えて住宅ローン締結時の銀行側に、よく精査せずロボットの如く機械的に書類にサインしていた「ロボサイナー問題」が発覚。これが各地で訴訟に発展して差し押さえが差し止められる事態が続発中だ。

 

次に雇用の問題がある。2月の雇用統計では、新規雇用者数増加が予想をはるかに下回ったのに失業率は9.0%にまで改善するという珍現象が見られた。これは大雪の影響が大きいが、求職活動諦め組の急増による見かけの失業率好転という要因も考えられる。米国の"失業者"の定義は「労働可能な状況で16歳以上、そして過去4週間以内に求職活動を行ったことがある」だ。求職活動をやめれば、職がなくても。失業者としてカウントされなくなるわけだ。

 

一般論として失業は循環的なものと構造的なものに分けられる。循環的失業は金融政策で対応できるが、構造的失業は生産性向上で生じた余剰人員をリストラすることなどが要因だ。企業業績は改善しているが、実はリストラ効果に頼っている状況は変わらない。

企業業績や景気の回復の確実性が高い日本株、日本円の相対的な魅力は増している。好決算銘柄に資金が向かいやすい環境のなか、これまでは比較的短期での日替わり物色が中心だった。欧米の債務問題や中国景気の先行き不透明感が強まっている状況下、消去法的に日本に資金が向かいやすい状況だと考えられる。米債務上限問題は期限である8月2日までに合意すると考えられるが、ギリギリまで合意がずれ込むことを想定すると、週内は膠着が続くことが見込まれる。また、合意したとしても米国債の格下げは避けられないとみられているほか、為替相場ではドル安のトレンドも続くとみられている。そのため市場は、これに備えた投資行動を採ると考えられ、全体としては内需・ディフェンシブ系に向かいやすい。株安、為替相場は円高。株、FX投資家の受難の時代が続きそうだ。